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(裁判例紹介)福岡高等裁判所平成29年5月18日判決 

事案の概要

被相続人Aには,長女Bと次女Xがおり,Bには子Y1及びY2がいる。
Aは,生前(平成元年,平成3年)に,B及びY1に対して不動産を贈与した。その後,平成16年にBは死亡し,平成23年にAが死亡した。

Aの相続人であるXは,B(被代襲者)の子であるY1及びY2(代襲相続人)に対し,上記贈与が特別受益にあたると主張し,遺留分侵害額請求(旧:遺留分減殺請求)をした。

争点

①遺留分侵害額請求(旧:遺留分減殺請求)において,被代襲者が生前に受けた特別受益が,被代襲者の死亡後に代襲相続人となった者らの特別受益に該当するか否か。

②推定相続人ではない者(Y1)が,被相続人(A)から贈与を受けた後に,被代襲者(B)の死亡によって代襲相続人としての地位を取得した場合に,当該代襲相続人の特別受益に該当するか否か。

判旨

(争点①について)
「亡Aから特別受益を受けたのは被代襲者である亡Bであり、当時、被控訴人らは亡Aの推定相続人でもなく、その後の亡Bの死亡によって代襲相続人になったにすぎない。
しかし、特別受益の持戻しは共同相続人間の不均衡の調整を図る趣旨の制度であり、代襲相続(民法八八七条二項)も相続人間の公平の観点から死亡した被代襲者の子らの順位を引き上げる制度であって、代襲相続人に、被代襲者が生存していれば受けることができなかった利益を与える必要はないこと、被代襲者に特別受益がある場合にはその子等である代襲相続人もその利益を享受しているのが通常であること等を考慮すると、被代襲者についての特別受益は、その後に被代襲者が死亡したことによって代襲相続人となった者との関係でも特別受益に当たるというべきである。
したがって、亡Bに対する上記贈与は、被控訴人らとの関係でも特別受益に当たると解するのが相当である。」

(争点②について)
「相続人でない者が、被相続人から直接贈与を受け、その後、被代襲者の死亡によって代襲相続人の地位を取得したとしても、上記贈与が実質的に相続人に対する遺産の前渡しに当たるなどの特段の事情がない限り、他の共同相続人は、被代襲者の死亡という偶然の事情がなければ、上記贈与が特別受益であると主張することはできなかったのであるから、上記贈与を代襲相続人の特別受益として、共同相続人に被代襲者が生存していれば受けることができなかった利益を与える必要はない。また、被相続人が、他の共同相続人の子らにも同様の贈与を行っていた場合には、代襲相続人と他の共同相続人との間で不均衡を生じることにもなりかねない。
したがって、相続人でない者が、被相続人から贈与を受けた後に、被代襲者の死亡によって代襲相続人としての地位を取得したとしても、その贈与が実質的には被代襲者に対する遺産の前渡しに当たるなどの特段の事情がない限り、代襲相続人の特別受益には当たらないというべきである。」

所感

(争点①について)
たしかに,代襲相続人は当初相続人ではなく,被代襲者が死亡したことによって偶々相続人となったわけですが,被代襲者の人格をそのまま承継するわけですから,判旨のとおりかいすることは理解しやすいところであろうと思います。

(争点②について)
推定相続人ではない者が受けた贈与が全て持ち戻しの対象となると判示したわけではなく,代襲者と被代襲者との関係性等個別の事情を考慮して,持ち戻しの対象となりうる場合があることを示したもり,妥当な立場であろうと考えられます。

※参考文献 判例タイムズ No.1443 61ページ

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