遺産分割協議書の無効主張

 

質  問

父が亡くなり,相続人である兄弟3人で遺産分割協議書に署名捺印をしました。私は,遺産分割協議という言葉もよくわからなかったのですが,生前に父と同居して,父の財産を管理していた兄が「今後の手続に必要だから」といって,「遺産分割協議書」というタイトルの書面を持ってきて,ハンコを押すように求めてきたのです。私は,兄から言われたというだけで,一応内容を確認し,署名押印しました。
しかし,その後,遺産分割協議書に一部の土地が記載されていないことが判明しました。
私は,兄がわざと遺産分割協議書から書き漏らしたのではないかと疑っています。この際,遺産分割協議書は無効にすべきだと思うのです。
私の主張は通るでしょうか。
 

回 答

遺産の一部遺漏が無効となるかは当事者の意思解釈の問題。その遺漏した財産の価値,内容等を考慮し特別な事情がある場合には無効となることも。
 

遺産分割協議書を作成したときにわからなかった財産が判明した場合,その遺産分割協議書は当然に無効となるわけではありません。

というのは,遺産分割の合意も,あくまで当事者が「この分割内容で合意しよう」という意思が合致した結果ですので,簡単に無効とすることはできないのです。

この質問の事例で考えると,法律上「錯誤」に該当する場合には遺産分割協議は無効となりえるのですが,一部分について「勘違い」があったとしても無効にはならず,その遺産分割において重要な部分であるかどうか(要素の錯誤といいます。)がポイントです。その遺産分割をするにあたって,遺漏していた財産を知っていたのであればこのような遺産分割協議内容で合意しなかった,と言いうるのか,ということです。
例えば,価値が1000円の置物を遺産分割協議に入れ忘れたからといっても,さほど重要な部分ではないことが多いと考えられるため,遺産分割協議書は有効になるでしょう。

本件の質問では「一部の土地」が遺漏していたとのことですが,この価値や遺産分割協議書に署名押印した経緯などを総合的に考慮して,無効とすべきかが判断されることになります(法的な主張はおいておくとして,そもそも,一度白紙にして協議をすべきなのかも検討すべき点です)。

なお,かりに重要な部分に錯誤があったとしても,それが重大な過失に基づいて遺産分割協議に合意した場合は,錯誤無効の主張をすることはできないことは注意すべきです。
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