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特別縁故者とは?必要なケースや手続きの流れを解説

内縁の夫が死亡した場合、その財産は誰が引き継ぐのでしょうか。内縁の妻としては、これまで法律上の妻と同様に一緒に生活をしていたわけですから、内縁の夫の財産を承継したいと考えるのが自然です。

もし内縁の夫が、財産を全て内縁の妻に渡す旨の遺言書を作成していれば、内縁の妻が財産を承継できます。
しかし、このような遺言書がない場合、どのようにすればよいのでしょうか。

実は「特別縁故者」という制度があります。この制度を使うことができれば、相続人でなくとも、財産を承継できる場合があるのです。

どのような制度なのか、弁護士が解説します。

最終更新日2023年7月26日

特別縁故者に関する解決事例はこちら≫

1.特別縁故者制度について

特別縁故者制度とは、被相続人(亡くなった人)に相続人がいない場合に、被相続人と、生前、関係が深かった人に対して、相続財産の全部または一部を分与するという制度をいいます。

基本的に、相続人でなければ被相続人の財産を承継することはできません。しかし、この特別縁故者制度を使うことで、民法上は相続人に当たらない人でも相続財産を分与される可能性があるのです。

2.特別縁故者として財産分与を受けるためには?

特別縁故者として財産分与を受けるためには、以下の条件を全て満たす必要があります。

①相続人がいないこと
②相続財産のうち資産が負債を上回っていること
③特別縁故者に該当すること

①相続人がいないこと

被相続人に、妻や子などがおらず法定相続人がいない場合のほか、相続人はいるものの全員が相続放棄した場合もここに該当します。
注意しなければならないのが、音信不通や行方不明であっても法律上相続人が一人でも存在する場合特別縁故者制度は使えません。

②相続財産のうち資産が負債を上回っていること

後述するように、相続財産管理人(相続財産清算人)が相続財産の清算を行います。生前に未払いとなっていた医療費、施設費、公租公課などを清算した後、それでも財産が残った場合に、その全部又は一部を与えることができるとされています。
実務上よく問題になるのは③の特別縁故者に該当するかどうかです。

3.特別縁故者に該当するケース

特別縁故者とは、以下の⑴~⑶のうちいずれかに該当する人をいいます。

以下のいずれの場合であっても、それに該当するかどうかはケースバイケースの判断です。

⑴被相続人と生計を同じくしていた者

「被相続人と生計を同じくする」とは、家計を同じくして、一緒に生活していたことをいいます。
被相続人の相続人には当たらない親族などが該当することが多いです。内縁の配偶者や事実上の養子の方もここに該当する場合があります。

例えば、被相続人との関係性、共同生活の実態、共同生活の年数、生活費は誰が負担していたのか、被相続人の死亡後に各種支払いに対応をしたのは誰か、葬儀営んだのは誰かなど総合的な事情を考慮して判断されます。

⑵被相続人の療養看護に努めた者

監護、介護、その他の生活の世話などを行ってきた人を言います。もちろん、数日間入院していたときに見舞いに行ったとか、数日間の体調不良を自宅で看病した等という場合は含まれません。

入院手続きや身の回りの品を購入する等の支援をしていたことも考慮される場合があります。
他方で、対価をもらっていたり、業務として行ってきた者はここに該当しません。

例えば、介護士や家政婦として療養監護を行ってきた人は、これに該当しません。もっとも、このような業務につかれている方であっても、被相続人との特別な関係性等を立証できるのであれば、特別縁故者に該当する可能性はありえます。

⑶その他被相続人と特別の縁故があった者

上記⑴や⑵に該当しないものの、それらと同程度に密接な関係性があった人が該当する場合があります。その人に財産を分与することが被相続人の意思に合致するかどうかという観点からも判断されます。

4.特別縁故者が相続財産の分与を受けるための手続き

ご自身が「特別縁故者に該当する」と思っても、国が自動的に財産を分与してくれるわけではありません。以下のように、ご自身で法律上求められている手続きを行っていく必要があります。

⑴ 相続人調査

まず、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等を取り寄せ、相続人の有無及び人数等を調査する必要があります。
相続人がいる場合は特別縁故者になることはできませんが、もしその相続人全員が相続放棄をしている場合は、特別縁故者制度を利用できる場合があります。

相続人が相続放棄をしたかどうかは、家庭裁判所に対して照会することで回答してもらえる場合があります。
具体的には、被相続人の最後の住所地を管轄する裁判所に対して、裁判所所定の書式で、相続放棄・限定承認の申述の有無について照会することができます。

この照会を行う場合は、被相続人の最後の住所地の住民票の除票、照会をする者と被相続人の関係性を裏付ける書面等を提出する必要があります。

⑵ 相続財産管理人(相続財産清算人)選任の申立て

相続人がいない、あるいは、相続人が全員相続放棄をしている場合、家庭裁判所に対して、「相続財産管理人(相続財産清算人)」の選任を申し立てます。
相続財産管理人(相続財産清算人)とは、被相続人に誰も相続人がいない場合に裁判所から選任された財産を管理する者です。通常は弁護士が選任されます。

⑶ 財産分与の申立て

相続財産管理人(相続財産清算人)は、債権申出の公告、相続人探索の公告を行います。公告というのは、簡単にいうと、官報に掲載をして「被相続人に対して債権を持っている人は申し出てくださいね」、「被相続人の相続人がいたら申出をしてくださいね」とアナウンスすることです。だいたい10カ月くらいかかるとお考えください。

この公告期間が終了、相続人の不在が確定したら、家庭裁判所に対して、特別縁故者の申立てと相続財産請求を行います。
注意しなければならないのが、相続人の不在が確定して3ヶ月以内に裁判所に申立てをしなければならないことです。
この期間を過ぎると申立てができません。

⑷ 裁判所の決定

裁判所が特別縁故者に該当するか審理を行い、特別縁故者に該当し、財産分与を認めるとした場合には、相続財産から裁判所が相当と認定した額を支払うことを認める決定が出されます。

注意点は、かりに特別縁故者に該当する場合であっても、相続財産の全部が財産分与されるとは限らないということです。
あくまで、特別縁故者と被相続人との関係性など総合的に考慮して判断されます。

5.特別縁故者以外の類似の制度(特別寄与料の請求)

民法が改正され、「特別寄与料」という制度が新設されました。この「特別寄与料」は、相続人以外の親族が無償で療養看護や労務の提供をした結果として、被相続人の財産が増加・維持された場合に、相続人に対して、その寄与に応じた金額の支払いを請求できるという制度です。

特別縁故者制度と異なり、相続人がいる場合でも請求が可能です。
例えば、被相続人の子の配偶者が、被相続人の介護療養を無償で行っていたというケースです。

被相続人の子の配偶者は相続人には該当しません。特に、被相続人の子(その配偶者の配偶者ということ)が、すでに死亡している場合、相続財産を受け取ることができません。このような場合が典型例として想定されています。

特別寄与料については、特別縁故者のような裁判所の手続きは不要ですが、相続人がこの支払に応じない場合は家庭裁判所に対して調停や審判の申立てが可能です。

期間制限が相続開始を知って6か月以内と短いので注意が必要です。

6.特別縁故者を主張する場合の弁護士費用について

特別縁故者を主張する場合の弁護士費用は以下のとおりです

(その他はこちらをご覧ください)。

相続人・相続財産調査 110,000円
相続財産管理人

(相続財産清算人)申立

275,000円
特別縁故者申立て、相続財産請求 経済的利益に応じて算定
300万円以下 17.6%
300万円超3000万円以下 11%+198,000円
3000万円超3億円以下 6.6%+1,518,000円
※最低報酬額は330,000円

7.終わりに

「自分には相続権がない」と思ってあきらめてしまう前に、一度弁護士にご相談をしてみましょう。
また、上記のような特別縁故者として裁判所に認定してもらうためには、単に情に訴えるだけではだめです。
きちんと、裁判所に認定してもらえるように構成し、必要な資料を提出しなければなりません。そのためには専門的な判断が必要ですから、弁護士に依頼することをお勧め致します。