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相続放棄をしたら「おしまい」なのか?

質 問

父が亡くなり、相続人は母(妻)、私(長女)2人です。相続財産としては、父名義となっていた実家の土地建物があります。しかし、父母ともにだいぶ前から施設に入所していたこともあり、自宅は古くてボロボロです。しかも、父は生前借金をしていたので、私と母は相続放棄をしようと考えています。
この場合、何か問題はありますか。

回 答

相続放棄をした場合、後順位の人が相続人となることは、こちらの記事で説明しました。

それでは、相続放棄をした場合、「もう私は関係ない」と言って、全ての責任から解放されるかというと、そうでもありません。
今回は、相続財産に土地建物が含まれているという点がポイントとなります。

相続放棄をしたことで初めから相続人とならないわけですから、所有権等の権利も承継しないため、何の責任も負わなくていいように思っていたのですが、違うのでしょうか。
相談者
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美咲総合法律税務事務所
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確かに、相続開始により、相続財産を管理する義務を負っていましたが、相続放棄をした場合、相続しないことが確定するわけなので、相続財産の管理義務は消滅します。
しかし、いきなり管理者がいなくなってしまうと、何かあった場合の責任の所在が不明確です。
民法では、相続放棄をした後に、新たに相続人となる人が、相続財産の管理ができる状態になるまで、相続放棄をした人が管理義務をすると規定されています。
どういった時に問題になるのでしょうか?
相談者
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美咲総合法律税務事務所
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例えば、自宅の建物について、自宅の瓦や屋根が劣化して、風で吹き飛んで通行人にケガをさせたとしたら、場合によっては、工作物の所有者として損害賠償義務を負うこともあります。
この時、新たな相続人が相続財産の管理ができる状態ではなかったとしたら、相続放棄をしていたとしても、損害賠償義務を負う可能性があるということです。

 

(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)

 

第七百十七条 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。

 

(相続財産の管理)

 

第九百十八条 相続人は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産を管理しなければならない。ただし、相続の承認又は放棄をしたときは、この限りでない。

 

 

(相続の放棄をした者による管理)

 

第九百四十条 相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。

 

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