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預貯金の仮払い制度について

質 問

相続に関する法律の改正により、亡くなった人名義の預貯金を、遺産分割を行う前に相続人が単独で払戻しができる制度ができると聞きました。これはどのような制度なのでしょうか。

回 答

亡くなった人名義の預貯金は遺産分割の対象となるため、相続人全員の同意がない限り、相続人が単独で払い戻しの手続きを行うことは原則としてできませんでした。
今回の改正により、相続人が単独で一定の金額の預貯金の払戻しの手続きを行うことが可能となりました。
この制度は、「預貯金の仮払い制度」などと言われています。

どうして、このような制度ができたのでしょうか?
相談者
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美咲総合法律税務事務所
美咲総合法律税務事務所
亡くなった人の葬儀費用や税金(固定資産税等)の支払いなど、亡くなった後比較的早い段階で支出を余儀なくされるお金について、相続人が用意できない場合の不都合に対応するためです。

その他、亡くなった人と同居していた人や扶養されていた人については、この制度を利用することにより、当面の生活費に充てることもできます。

仮払い制度はどのような方法で行えばよいですか?
相談者
相談者
美咲総合法律税務事務所
美咲総合法律税務事務所
2つあります。1つは、銀行などの金融機関の窓口で直接仮払いの請求をする方法です。この場合の払い戻せる金額は、相続開始時点(亡くなった日)の預貯金額×1/3×請求する相続人の法定相続分です。
この方法の場合は、預貯金を引き出す具体的な理由を説明する必要はありません。

ただし、先ほど述べたように、仮払い制度は相続人が当面お金に困らないようにするという理由で設けられた制度ですので、引き出せるお金の上限があります。
金融機関ごとの上限金額は省令で定められており、現時点では150万円が上限とされています。同じ金融機関に複数の口座がある場合は、併せて150万円となります。

また、仮払いを受けた場合、その金額は遺産分割の際に仮払いを受けた相続人の具体的な相続分から差し引かれることになります。

もう1つの方法はどのようなものですか?
相談者
相談者
美咲総合法律税務事務所
美咲総合法律税務事務所
家庭裁判所に対して、請求する方法があります。
仮払いを行う必要性がある場合、他の相続人の利益を害さない限り、家庭裁判所が保全処分として仮払いを認めてくれます。

この方法は先ほど述べた方法(金融機関に直接請求をする方法)とは異なり、引き出す金額に上限はありませんが、裁判所に仮払いを行う必要性を説明する必要があるため、手間と時間がかかります。

【改正後民法】(遺産分割前における預貯金債権の行使)

民法909条の2

各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の三分の一に第900条及び第901条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。

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