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遺留分の放棄について

父はまだ存命ですが、父が亡くなる前に遺留分(遺留分の説明はこちら)の放棄をしようと思っています。遺留分の放棄をするには、どのような手続きを行えば良いのでしょうか。

被相続人が亡くなる前(相続が開始される前)に遺留分の放棄をするには、家庭裁判所の許可が必要となります(改正後民法1049条)。

どうして、家庭裁判所の許可が必要なのでしょうか。

無制限に放棄を認めた場合、被相続人が相続人を威圧・脅迫するなどして、遺留分の権利がある方に放棄を強要し、戦前のような長子単独相続(子供のうち、長子すなわち長男が親の財産を単独で相続すること)を実現する目的で濫用されるおそれがあるため、家庭裁判所の許可を得ることを要件としました。

どこの家庭裁判所に許可の申立をすればよいのでしょうか。

被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所です。

家庭裁判所は、どのような事情があれば、遺留分の放棄を許可してくれるのでしょうか。

家庭裁判所は、①遺留分の放棄が強要されたものではなく、本人の自由な意思に基づくものであること
②放棄する理由の合理性や必要性の有無
③放棄と引き替えの見返り(代償)の有無などの事情を考慮し、相当と認めるときは放棄の許可を行います。
例えば、既に親から遺留分に相当するだけの経済的な援助を受けている場合などは、許可が得られやすいと思われます。反対に、親と不仲で、親が自分に財産を与えたくないと言っているという理由のみでは、許可が得られにくいでしょう。

 

遺留分の放棄をした後で、その撤回や取り消しをすることはできるのでしょうか。

原則としてできません。ただし、遺留分の放棄をした際の前提となった事情が大きく変わり、遺留分の放棄を維持することが客観的に見て不合理・不相当となった場合には、取り消しが認められる可能性はあります。この取り消しには、家庭裁判所の許可が必要になります。

遺留分の放棄をした場合、何も相続することはできないのでしょうか。

遺留分の放棄は相続の放棄(民法939条)ではないので、相続人である以上、遺産分割により、遺産を相続することは可能です。

(遺留分の放棄)

改正後民法1049条(改正前民法1043条)

1 相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。

2 共同相続人の一人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない。

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