相続財産管理人とは?
質 問
私は、Aさんという人に100万円を貸していたのですが、そのAさんが借金を返さないまま亡くなってしまいました。他にも借金をしていたようで、相続人の人は全員相続放棄をしたと聞きました。しかし、Aさんは不動産等を持っていて、財産が全くないわけではないと思うのです。
なにか債権を回収する方法はないのでしょうか。
回 答
相続人が全員相続放棄をして、誰に対して借金を請求したらよいか、という問題ですね。
相続においては、相続財産管理人を選任し、相続財産管理人に対して請求する形になります。
美咲総合法律税務事務所
相続はプラスの財産もマイナスの財産も承継するため、被相続人の借金は相続人が承継します。しかし、相続人が相続放棄した場合、誰も承継しないことになってしまいます。
民法 第952条
前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の管理人を選任しなければならない。 |
私でも、相続財産管理人指定の申立をすることができますか?
相談者
美咲総合法律税務事務所
「利害関係人」は「相続財産の帰属について法律上の利害関係を有する者」(新版注釈民法(27)相続(2)久貴忠彦ら編688頁)とされていて、債権者もここに含まれます。この利害関係人等が、家庭裁判所に選任の請求をしますので、相談者様(債権者)が申立を行うことができます。
相続財産管理人が選任された後の手続きを教えてください。
相談者
美咲総合法律税務事務所
相続財産管理人が選任されると、家庭裁判所はその旨を公告します(952条2項)。この「公告」は、家庭裁判所の掲示板への掲示と官報への掲載です(家事事件手続規則4条1項)。
掲載する内容は、以下のとおりです。
家事事件手続規則
第百九条 民法第九百五十二条第二項の規定による公告には、次に掲げる事項を掲げなければならない。 一 申立人の氏名又は名称及び住所 二 被相続人の氏名、職業及び最後の住所 三 被相続人の出生及び死亡の場所及び年月日 四 相続財産の管理人の氏名又は名称及び住所
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美咲総合法律税務事務所
その後、相続財産管理人は、不動産、預貯金や有価証券、生命保険などの財産を調査し、散逸しないように管理をします。例えば、預貯金等については、差押え等されないように、解約の上、相続財産管理人の口座に移します。不動産は売却をしてお金に換えます。このように、被相続人のプラスの財産を管理するのです。その一方で、マイナスの財産もどの程度あるのか、調査を行います。
(相続債権者及び受遺者に対する弁済)
第九百五十七条 第九百五十二条第二項の公告があった後二箇月以内に相続人のあることが明らかにならなかったときは、相続財産の管理人は、遅滞なく、すべての相続債権者及び受遺者に対し、一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。 |
手続きが複雑ですが、わたしは、いつ頃貸したお金を回収できるのでしょうか?
相談者
美咲総合法律税務事務所
相続財産管理人の選任の公告から2か月以内に相続人がいない(出てこない)ようであれば、全ての債権者や受遺者に対して、債権の申し出をするよう公告をします。この申出期間満了後に、配当します。
相続財産管理人の申立をして、公告を待って、相続財産管理人がAさんの財産を調査して、プラスであれば、私や、私の他にお金を貸していた人へ、プラスの財産が配当されるということですね。
相談者
美咲総合法律税務事務所
そのとおりです。配当ですから、財産がどれだけ残っているかや、相談者様のようにお金を貸していた人がどのくらいいたかにもよりますから、相談者様が貸した100万円が全て戻ってくるかどうかは定かではありませんので、注意が必要です。