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被相続人に債務があった場合①

質 問

父が先月亡くなりました。相続人は母と兄と私と弟になります。同居していた兄の話によると、銀行から借りていた債務がかなりあるようです。一方で、父と兄家族が住んでいた自宅は父の名義だということです。

兄からは債務は自分がなんとか処理するから自宅は自分だけ単独で相続したいということでした。そして、そのような内容の遺産分割協議書を司法書士さんに頼んで作ってもらったので、そこに実印を押して印鑑証明を取り寄せて渡してくれれば手続きをするので、そのように応じてほしいと頼まれました。

母も私も弟も財産は相続したいとは考えておらず、また債務は引き継ぎたくないと言う考えです。

兄の要請通りに応じてもいいものでしょうか。

回 答

相続人は相続分に応じて、被相続人の遺産と債務を当然に引き継ぐのが原則です。すなわち、相続分に応じた債務を引き継ぎ、その債務を自分の責任で履行しなければならない義務を負うことになります。

したがって、仮に被相続人から引き継ぐ資産が負債より少なかったとしても、法定相続分に応じて引き継いだ債務については責任があり、場合によっては自分の預金をはたいたり、固有の資産を換金したり、借金してでも払わなくてはならなくなることもあります。

 

美咲総合法律税務事務所
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この設問のようにお兄さんが債務も全部引き継ぐと約束してくれていても、その約束はあくまでも相続人間の内部の問題ですので、銀行との関係では各相続人が相続分に応じて債務を負担することになります。
したがって、仮にお兄さんが約束したとおり債務の処理ができなくなった場合は、銀行からあなた方にも請求がなされる恐れは十分にあります。
遺産を受け取らないという記載がある遺産分割協議書だけでは、効果がないということですね。
では、どうしたらよいのでしょうか?
相談者
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美咲総合法律税務事務所
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このような事態を避けるには、家庭裁判所に相続放棄をする必要があります。これは、遺産分割協議書で遺産も債務も相続しないという内容の合意をすることとは別な手続きです。
もちろん、遺産分割協議書は自宅など遺産について相続登記をするにはそれで手続きが可能となりますが、遺産も債務も引き継がせないという場合は、遺産分割協議書を作成するだけでは、不十分と考えるべきです。債権者である銀行などに対して、債務の責任を免れる主張はできないものです。
美咲総合法律税務事務所
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このような場合は必ず家庭裁判所に相続放棄の手続きをする必要があります。この手続きは相続開始を知ってから、3ヶ月以内に行うことが原則ですので、早めに専門家に相談して、然るべく対処をしなければなりません。

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