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使途不明金がある場合

質 問

父が亡くなった後、通帳の履歴をみたところ、明らかに父の生活に必要な分より多額のお金が引き出されていることがわかりました。私は、同居していた兄が引き出して、使い込んでいたのだと思います。
私はどのような手段をとればいいのでしょうか。

回 答

立証可能性を検討して、一般民事調停や民事訴訟手続の利用を視野に入れる必要があります。

美咲総合法律税務事務所
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当事務所には、相続人の一人が生前や死後に被相続人の預貯金を引出しているといったご相談がよく寄せられます。相続人の一人が被相続人の面倒を見ていて、他の相続人が遠方に住んでいるようなケースでこのような事態が発生しやすいのではないでしょうか。
ひと口に「使途不明金」と言っても、生前に引き出したのか、死後に引き出したのかという点は区別する必要がありますし、その引出しが被相続人の意思に基づくものなのか、意思に反する無断の行為なのかも注意すべきです。
美咲総合法律税務事務所
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それでは、いくつかのケースに応じて検討していきましょう。

1.生前の無断引出し(預金の使い込み)

生前に無断で引き出されたのであれば、これは、遺産分割そのものの議論ではなく、引き出した者に対する不当利得返還請求権又は不法行為に基づく損害賠償請求権の問題と考えられます。そして、この請求権は分けることが可能な債権(これを可分債権といいます。)ですから、法定相続分に応じて当然に分割され、各相続人が取得することになります。
この請求権を、遺産分割協議とは別に、一般民事調停(家事調停ではありません。)や民事訴訟で請求することとなります。

 

2.死後の無断引出し

死後の場合、すでに相続が発生し、例えば預金債権などの可分債権は各相続人が法定相続分に従って当然に取得します。(かりに銀行が払い戻しに応じたとして、)
一部の相続人が自分の法定相続分を超える預貯金の引き出しをした場合、他の相続人は自分の相続分を侵害されたとして、引き出しをした相続人に対して、上記「生前の無断引出し」の場合と同じく、一般民事調停や民事訴訟で請求していくことになります(最高裁判所平成16年4月20日判決)。

 

3.被相続人の意思に基づく引出し

かりに、被相続人の意思に基づいて引出し、それを引き出した人のために使ったというのであれば、それは特別受益の問題です。この場合、遺産分割の家事調停や審判などで取り扱われるものです。

 

4.立証の困難性

もっとも、以上述べたことは、あくまで引き出した人が「自分が無断で引き出した」と認めた場合や、その人が無断で引き出したという証拠が残っている場合です。

しかし、相続人間で感情的な対立がある場合や、その引出しを隠したい動機があるような場合、「自分が無断で引き出した」などと認めることはあまり無いでしょう。また、引出しも、例えば金融機関の窓口で払い戻し伝票などを記入して引き出しているような場合は、その伝票の筆跡から引き出した者を立証することも不可能ではないと思いますが、ATMで引き出しているような場合は誰が引き出したのかさえ立証が困難です。単に同居していたとしても預貯金の管理まで行っているとは当然に言えませんし、その引き出した被相続人の意思に反するかどうかも立証する資料が無いことがほとんどだと思われます。

被相続人の生前の様子(自分で行動して銀行に行けるようだったのか等)、どこまで財産を管理していたのかなどという事情から立証可能性を検討し、訴訟手続きを利用するかどうか、調停の中でまとめて検討をするのかといった選択を行う必要があります。

 

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