遺留分-使途不明金がある事案について約280万円増額した事例
事件の種類
遺留分侵害額請求(旧:遺留分減殺請求)
事件の概要
相続人は被相続人の子2名及び孫2名(代襲相続)で、この孫にあたる方2名からご依頼をいただきました。
被相続人は生前に遺言書を作成しており、子2名に対して財産を相続させる旨の内容でしたが、依頼者の親にあたる方への相続分がありませんでした。そのため、遺留分(36分の1)の侵害があることは明白でした。
それに加え、被相続人名義の口座の取引履歴を取得したところ、被相続人の生前に総額1億円以上の金額が引き出されていました。
しかし、この引出しが誰によって行われたのか、またその金銭がどのような使途で消費されたのかがわかる資料は存在しませんし、相手方も引き出し行為は自分でしたものではないと述べていました。
さらに、相続人の1名は、被相続人から、被相続人の生前にマンションの贈与を受けたという話もあり、その他多額の贈与が疑われる状況でした。
もっとも、それを裏付ける客観的な資料はありませんし、相手方も贈与を受けた事実を否定していました。
依頼者の方は、当初ご本人で直接相手方とやり取りをされたのですが、解決に至らないため、当事務所にご依頼されました。
当事務所の方針
生前の引き出しや生前の贈与については、それを裏付ける資料はなく、またそれを取得する手段もありませんでした。また、依頼者としては、紛争を長期化することは本意ではないとのご希望でした。
そこで、依頼者と協議し、相手方に対しては、厳密な金額を算定して主張していくのではなく、交渉の中で金銭的な折り合いをつけるという方針としました。
当事務所の活動
当初は裁判手続きを利用せずに交渉していたものの、相手方が支払う金額の増額に難色を示したため、すぐに調停を申し立てました。
調停の中で、生前の被相続人の生活状況や相手方の生活状況等を説明し、少なくとも、相手方が生前に経済的援助を受けていたことは明らかである旨を調停委員にお話ししました。
その中で、当初相手方は難色を示していたものの、徐々に態度を軟化させ、当初相手方が示してきた金額から総額約280万円程度増額する内容で調停を成立させました。
担当弁護士の所感
使途不明金の扱いは非常に難しく、裏付け資料が無く、相手方がその引出しを否定している場合の立証は容易ではありません(詳しくは「よくあるQ&A」をご参照ください)。
立証可能性等を踏まえると、裁判に移行すれば当方の主張が認められない可能性が見込まれる事案でしたので、早期かつ依頼者に経済的利益をもたらす内容で調停を成立させることができたことは、大変良かったと思います(担当 江幡賢,五十嵐)。

江幡 賢

最新記事 by 江幡 賢 (全て見る)
- 遺産分割交渉-使途不明金が問題になったが、交渉で早期に解決できた事案 - 3月 21, 2021
- 遺産分割調停-不動産を取得する代わりに支払う代償金の支払方法が問題となった事例 - 3月 18, 2021
- 遺産分割協議-高額な特別受益について、交渉で勝ち取った事例 - 3月 16, 2018
関連記事はこちら
- 収益物件について民事信託を設定した事例
- 遺産分割調停-調査の結果、相手方が被相続人から生前贈与を受けていることが判明したため、贈与分を相手方の特別受益として遺産分割を行った事例
- 遺産分割協議-遺産調査を速やかに行い、早期に解決できた事例
- 使途不明金-相続人から被相続人の預金に使途不明金があるとして、その返還請求をされた事例
- 遺産分割協議-弁護士が交渉し、疎遠となっていた相続人と遺産分割協議が成立した事案
- 遺産分割協議-弁護士の交渉により、疎遠な相続人と早期に遺産分割協議が成立した事案
- 遺産分割調停-弁護士が調停を申し立て、多数の県外在住の相続人と遺産分割調停が成立した事案
- 遺産分割調停-代償金を支払うことなく遺産を全て取得できた事例
- 遺産分割-弁護士の交渉により、自宅の土地建物を相続でき、早期に解決できた事例
- 遺産分割交渉-使途不明金が問題になったが、交渉で早期に解決できた事案
- 遺産分割調停-不動産を取得する代わりに支払う代償金の支払方法が問題となった事例
- 遺産分割協議ー遺産内容を相手方に丁寧に説明し納得してもらい、早期に解決できた事例
- 遺産分割調停-不動産を取得する代わりに支払う代償金の支払方法が問題となった事例
- 遺産分割協議-感情的対立がある場合に交渉により解決した事例
- 遺留分-訴訟にて遺留分侵害額に相当する約600万円の支払いを受けた事例
- 遺産分割協議-高額な特別受益について、交渉で勝ち取った事例
- 遺産分割調停-生命保険の受取人変更、不動産評価が問題となった事例
- 遺産分割協議-相続財産調査後、交渉により解決した事例
- 遺産分割協議-双方代理人関与のもと交渉により解決した事例
- 遺留分-感情的対立がある場合に交渉により解決した事例
- 遺言書作成-依頼者の希望に添った公正証書遺言を作成した事例
- 遺言書作成-相続紛争を避けるために公正証書遺言を作成した事例
- 遺言書作成-子の生活に配慮した公正証書遺言を作成した事例
- 遺産分割協議-交渉により早期に遺産分割協議を成立させた事例
- 遺産分割協議-相続人調査と遺産分割協議書の作成を行った事例
- 遺留分-遺留分侵害額に相当する約600万円の支払いを受けた事例
- 遺言書作成-字が書けない方について公正証書遺言を作成した
- 死因贈与-死因贈与契約を立証し、預金の払い戻しを受けた事例
- 不当利得-預金の使い込みをした相続人から返還を受けた事例
- 相続税-土地境界の確定による相続税の更正をした事例